「墓じまいに補助金が出る」という情報を見て、このページにたどり着いた方が多いと思います。
先に、いちばん大事なところをお伝えします。墓じまいの費用を直接助成してくれる自治体は、公式に確認できる範囲ではごく少数です。しかも、その多くは「その自治体が運営する公営墓地を使っている人」に限られています。
お寺の墓地や民営霊園のお墓を片付ける場合に使える補助金は、調べた限り公式情報が見つかりませんでした。
がっかりさせてしまったかもしれません。ただ、期待して調べ続けて時間を失うより、早い段階で実態を知っていただくほうが役に立つはずです。この記事では、実在が確認できた制度と、その条件を正直にまとめました。
横浜市は「補助金制度はありません」と明記している
まず、いちばんわかりやすい例から。
横浜市は公式サイトに、次のように書いています。
横浜市には墓じまいに関する補助金制度はありません。
(出典:横浜市公式サイト「墓じまいの補助金について」)
わざわざこう書いているのは、問い合わせが多いからでしょう。同じように、神戸市も「助成金制度は設けていません」、京都府も「いわゆる墓じまいに対する補助制度はありません」と公表しています。
大都市でこの状況です。「どこかの自治体にはあるはず」と探し続けても、見つからない可能性のほうが高いのが現実です。
それでも実在する制度はある(条件つき)
とはいえ、ゼロではありません。撤去費用を現金で助成している自治体を、原本で確認できた範囲で挙げます。
| 自治体 | 助成額 | 対象 |
|---|---|---|
| 群馬県太田市 | 実費または20万円の低いほう | 八王子山公園墓地のみ |
| 千葉県市川市 | 21万〜44万円(区画の広さによる) | 市川市霊園のみ(※受付終了中) |
| 千葉県浦安市 | 上限15万円 | 市の墓地公園のみ |
| 北海道苫小牧市 | 借入の利息・保証料に最大5万円 | 高丘霊園・高丘第二霊園 |
ここで注目していただきたいのが、右端の「対象」欄です。
すべて、その自治体が運営する特定の墓地の使用者に限られています。太田市の資料には「他墓地の墓石撤去費用は対象となりません」とはっきり書かれています。
つまり、太田市民であっても、お寺の墓地にあるお墓を片付ける場合は対象外です。
市川市はすでに受付を終了しています
市川市の制度は金額も大きく魅力的に見えますが、公式サイトに「予算額に達したため受付を終了しました」と掲示されています(令和8年5月22日現在)。
補助金は予算がなくなればそこで終わります。「制度がある」と「今もらえる」は別の話だと考えておいたほうがよさそうです。
苫小牧市は現況が確認できませんでした
苫小牧市の制度は、総務省の報告書に記載があります。ただし、市の公式サイトで現在の案内ページを見つけることができず、案内文書のリンクも切れていました。
利用実績がゼロだったという記録もあり、現在も続いているかどうかは、市に直接お問い合わせください。
「補助金がある」と紹介される制度の正体
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
墓じまいの補助金として紹介されている制度をよく読むと、実は4つのまったく違うものが混ざっています。
1. 撤去費用の現金助成
先ほどの表の制度です。これが本来の意味での補助金ですが、数が少なく、公営墓地限定です。
2. 借入の利子補給
苫小牧市がこのタイプ。お金をもらえるのではなく、墓じまい費用を借りたときの利息や保証料を軽くしてくれる制度です。撤去費そのものは自己負担のままです。
3. 合葬墓の使用料免除
東京都立霊園の「施設変更制度」などがこれにあたります。遺骨の移し先である合葬埋蔵施設の使用料がかからない、という制度です。
ここで誤解が起きやすいので、公式リーフレットの記載を引用します。
現在使用しているお墓を更地にする費用は使用者の負担になります。
移転先の費用は免除されますが、墓石を撤去する費用は自分で払います。「都立霊園は撤去費が免除される」と書いているサイトを見かけますが、これは正確ではありません。
4. 永代使用料の還付
過去に払った永代使用料の一部が戻ってくる制度です。助成ではなく返金なので、性質が違います。
しかも条件が厳しく、泉大津市の場合、使用開始から30年以上経っていると還付額は0円です。岡山市は「まだ遺骨を納めていない区画」が条件。すでにお墓として使ってきた区画では、戻らないか大幅に減るのが実情です。
読者の方が本当に減らしたいのは、20万〜50万円かかる墓石の撤去費用のはずです。ところが実際に多いのは「還付」や「移転先の免除」で、肝心の撤去費は自腹。ここが最大の落とし穴だと感じました。
なぜ空き家には補助金があって、お墓にはないのか
「空き家の解体には補助金が出るのに、どうしてお墓は出ないのだろう」と思った方もいるかもしれません。
実際、空き家の解体費用への補助は多くの自治体にあります。長野市は上限100万円、宇都宮市は対象額の2/3で上限70万円といった具合です。これは国土交通省の「空き家対策総合支援事業」という国の仕組みが後ろにあり、除却費の一部を国が負担しているからです。
一方、墓じまいには、この国の補助制度にあたるものがありません。だから自治体が独自に予算を組むしかなく、広がっていないわけです。
総務省の報告書には、こんな指摘もありました。
地方公共団体にとって無縁墳墓等への対応の優先順位は必ずしも高くない
自治体の側にも事情がある、ということでしょう。
改葬の手続き自体は、ほとんどお金がかかりません
補助金の話とは別に、安心していただける事実もあります。
墓じまいに必要な「改葬許可申請」の手数料は、無料の自治体が多数派です。姫路市・京都市・横浜市・船橋市・大津市・北九州市などは無料と公表しています。
有料でも300円程度。奈良市・塩尻市・越前市・霧島市などが300円です。
ちなみに霧島市は「一回の申請で数体分の改葬をしても300円」と案内しています。一方、塩尻市は遺骨1体につき300円。同じ金額でも数え方が違うので、複数の遺骨を移す方は事前に確認しておくと安心です。
役所の手続きは、費用の面ではほとんど負担になりません。
補助金より現実的な、費用を抑える方法
補助金があてにできないなら、どうすればよいか。実際に効果があるのは次の3つです。
移転先を合葬墓や樹木葬にする
新しくお墓を建てると、そこでまた100万円単位の出費になります。合葬墓や樹木葬なら、大きく抑えられます。
たとえば苫小牧市の共同墓は、遺骨1体につき11,000円(使用料7,000円+管理料4,000円)。公営の合葬墓は費用を抑えやすい選択肢です。
石材店から相見積もりを取る
撤去工事の費用は業者によって差が出ます。2〜3社から見積もりを取って、内訳と追加条件を比べてみてください。
当サイトの相見積もり比較シートを使うと、金額と条件を並べて確認できます。
自分の霊園に返還の制度がないか聞く
公営墓地を使っている方は、管理事務所に「返還時の助成や使用料の還付はありますか」と直接聞いてみてください。ウェブに載っていない運用が見つかることもあります。
参考:墓じまいは年々増えています
最後に、背景となる数字をひとつ。
厚生労働省の統計によると、全国の改葬件数は次のように推移しています。
| 年度 | 改葬件数 |
|---|---|
| 令和3年度 | 118,975件 |
| 令和4年度 | 151,076件 |
| 令和5年度 | 166,886件 |
| 令和6年度 | 176,105件 |
令和6年度は過去最多です。5年で1.5倍近くに増えました。
また総務省の調査では、公営墓地を持つ市町村の58.2%が、無縁墓を抱えている(その疑いを含む)と報告されています。人口30万人以上の市では78.9%にのぼります。
これだけ需要があるのに補助金が広がらないのは、先ほどの「優先順位が高くない」という指摘が背景にあるのでしょう。将来的に制度が増える可能性はありますが、今すぐ当てにできるものではなさそうです。
お墓の条件で費用の目安を出す
補助金があてにできない分、撤去費と移転先の費用を早めにつかんでおくと計画が立てやすくなります。無料のシミュレーターで概算を確認できます。
まとめ
調べた結果をもう一度整理します。
- 墓じまいの費用を直接助成する自治体は、公式に確認できる範囲ではごく少数
- 実在する制度も、その自治体の公営墓地の使用者に限られる
- 「補助金がある」と紹介される制度には、使用料の還付や移転先の免除が混ざっている
- 都立霊園の施設変更制度でも、墓石の撤去費用は自己負担
- 改葬許可の手数料は無料〜300円程度で、ここは負担にならない
補助金を探す時間を、相見積もりや移転先選びに使ったほうが、結果的に費用は下がるはずです。
なお、ここに書いた内容は執筆時点で公式サイト等から確認したものです。制度は予算の状況で変わりますし、募集期間が決まっているものもあります。実際に申請を考える場合は、お住まいの自治体と、お墓のある霊園の管理者に直接ご確認ください。
まずはご自身のお墓の条件で費用がどれくらいになるか、墓じまい費用シミュレーターで確かめてみてください。改葬の手続きの流れは改葬手続きステップナビで順に確認できます。
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